狡猾な王子様
「そんなに落ち込むなよ、ふう。秋の性格が悪いのはともかく、ふうの気持ちはもう皆知ってるんだから今更気にすることないよ」


なっちゃんは笑顔でフォローにならない言葉を並べ、慰めるように私の頭をポンポンと撫でた。


「なん、で……皆知って……」


「だって、木漏れ日亭に行く時はやけにソワソワしてるし」


「いつもよりも早起きらしいし」


「無駄に洗面台占領してやがるし」


春ちゃんとなっちゃんと秋ちゃんが順番に答えていき、最後に秋ちゃんが心底嫌そうな顔で更に付け足した。


「あんなエセ臭い男のどこがいいのか、まったくわからねぇけどな」


その言葉にムッとした私は、頭で考えるよりも先に口を開いていた。


「エセ臭くなんかないもん……」


「好きなのは認めるんだ」


「そっ、そうじゃなくてっ……!私はただ、英二さんはエセ臭くないって言いたいだけで……」


ニヤニヤと笑うなっちゃんにボソボソと返すと、秋ちゃんが三本目のビールのプルトップを開けた。

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