狡猾な王子様
「いや、あいつは充分エセ臭い」


「秋、木漏れ日亭のオーナーってどんな人?そんなにエセ臭いの?」


「おー。男にも女にもヘラヘラ笑いやがるし、あの感じだと相当遊んでるぞ」


春ちゃんの質問に答えた秋ちゃんは、英二さんに余程の恨みでもあるのだろうか。


初めての配達の時に一緒に行ったきり英二さんとは会っていないはずなのに、秋ちゃんはまるで彼のことを毛嫌いしているみたいだ。


「……秋ちゃんって、英二さんのことが嫌いなの?」


「好きとか嫌いとかいう以前に、ああいうヘラヘラしたのは生理的に受け付けねぇんだよ。男でも女でもな」


きっぱりと即答した秋ちゃんに、「あんな奴のどこがいいわけ?」とため息とともに返された。


「だ、だから、私は別に……」


「あぁーっ、面倒臭ぇ!あの男は心底いけ好かねぇけど、好きなら好きでいいじゃねぇか!」


否定の言葉をしどろもどろ並べる私に痺れを切らしたらしく、短気な秋ちゃんがとうとう声を荒げた。

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