狡猾な王子様
「そんな言い方するなよ、秋。お前と違って、ふうは繊細なんだから」


「そうだよ、秋」


俯いて黙り込む私を、なっちゃんと春ちゃんが庇ってくれる。


子どもの頃から変わらない光景に、自分がいかに成長していないのかを思い知らされた。


「ふう?」


「え?」


「大丈夫?」


いつの間にか私の顔を覗き込んでいた春ちゃんが、心配そうに眉を下げている。


上手く笑える自信はなかったけど、すぐ傍でギャーギャーと言い合うなっちゃんと秋ちゃんの賑やかさが、ほんの少しだけ笑顔に近付けてくれたような気がした。


こんな時は、やっぱり大家族でよかったと思う。


「ごめんね、大丈夫だよ」


春ちゃんはヘラリと笑った私の頭を優しく撫でてくれたあと、いつものように瞳を緩めて穏やかに微笑んだ。


「どんな理由があるにせよ、誰かを好きになるのはとってもいいことだよ」


なにも答えられなくて曖昧な笑みを浮かべると、今度はなっちゃんに背中をポンと叩かれた。

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