狡猾な王子様
ブログを更新している私を余所に、三人はいつの間にか縁側に移動していた。


昼間のことが頭から離れなくて、やっぱり胸の奥が痛むけど……。


皆の明るい声を聞いていると心が温かくなって、なんだかほんの少しだけ救われた。


「おい、ふう!お前もたまには呑め!」


「無理だよ、お酒苦手だもん。私はもうお茶でいい。それより、全部食べないでよ。明日のおやつにするんだから」


「ふう、食べたのは秋だけだから」


「そうだよ、僕たちはビールしか呑んでないからね」


「はぁ!?お前らも食ってたじゃねぇか!」


「僕は本当に食べてないって」


「ふう、秋におやつ買って貰いな。めちゃくちゃ高いやつ」


「秋ちゃん、ハーゲンダッツとゴディバでもいい?」


「なんでだよ!スーパーの特売品のくせに、見返りがぼったくりじゃねぇか!」


開けっ放しの縁側の扉から見上げた夜空には、満月がぽっかりと浮かんでいる。


月夜の宴会は、淀んでいた心に少しだけ元気をくれた──。

< 60 / 419 >

この作品をシェア

pagetop