狡猾な王子様
車から荷物を下ろすと、英二さんはすかさず重い方の段ボールを持ってくれた。


私は決してか弱くはないし、重い段ボールだってわりと簡単に持ててしまうけど……。


女性扱いをしてくれることがわかるその気遣いは、やっぱりとても嬉しい。


自然と零れる笑みを浮かべたまま、英二さんから半歩分離れて歩き出した。


ぽっちゃりとした体型にコンプレックスを抱く私の服装は、ネルシャツにデニムパンツという、とてもシンプルなもの。


そして、英二さんの服装も洗い晒しのブルーのシャツにデニムという似たようなものなのに、なぜかとてもおしゃれに見えてしまう。


背の高い彼は、決して太っているわけでも痩せ過ぎているということもなくて、シンプルな服を雑誌の切り抜きのように着こなせるスタイルが羨ましくなる。


当然、私よりも遥かに長い足を持ちながらも、私に歩幅を合わせてくれる優しさを持ち合わせていて、もはや非の打ちどころがない。


惜しみなく向けられる穏やかな笑顔は、今までに何人の女性の心をくすぐって来たのだろう。


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