狡猾な王子様
「俺ね、女の子は皆、普通に好きなんだ」


なんてことはないとでも言うように、英二さんがニッコリと笑って見せる。


あまりにも普段と同じように話すから、今どんな話をしているのかわからなくなってしまいそうだった。


「学生時代からの友達も、お客さんも、友達の彼女も。……もちろん冬実ちゃんも、ね?」


それは暗に、『皆同じだ』と言っているのだろう。


「別に、誰でもいい、ってわけじゃないんだけどね」


優しく微笑むこの男性(ひと)は、一体誰なのだろう。


「でも、誰かじゃないとダメ、ってこともないんだ」


英二さんは瞳を伏せながらフッと笑ったあと、「俺ってとてつもなく最低な奴でしょ?」とため息混じりに微苦笑を漏らした。


なにも言えなかった。


言葉なんて出て来なかった。


「あのね、冬実ちゃん」


そんな私の心情を知ってか知らずか、英二さんは自分の為に淹れていたアイスティーに口を付けてから、おもむろに私に視線を戻した。

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