狡猾な王子様
浅はかな告白をした翌日の夜、夕食を終えて誰もいなくなった居間にひとりで残っていた。


お父さんは農協の会合という名の飲み会、お母さんは近所の寄り合いという名目の井戸端会議、おじいちゃんとおばあちゃんは自室にいる。


春ちゃんとなっちゃん夫婦はそれぞれ離れに戻り、夜勤の秋ちゃんは身支度を整えて出ていったばかり。


珍しく静かな空間は居心地が悪くて、お風呂に入ろうと脱衣所へ向かう。


一晩中泣いていたせいで鏡に映る顔は酷く浮腫んでいてますます丸く見え、唯一コンプレックスではないパッチリとした二重の瞳も腫れぼったくなってしまっている。


余計に気分が落ちるのを感じながら、湯気の充満するお風呂場へ足を踏み入れた。


仲よく並んでいるシャンプーとコンディショナーは、スーパーの特売で買った物に違いない。


もちろん、ボディーソープなんてオシャレな物が並んだことはなくて、その横にあるのはケースに入った固形石鹸。


一緒に置いてある洗顔も、とてもリーズナブルな物だ。

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