狡猾な王子様
「ありがとう、冬実ちゃん」


「いえ、こちらこそありがとうございました。助かりました」


さっきの段ボールの隣に運んだばかりのふたつの段ボールを置くと、英二さんは調理場に戻ってアイスティーを淹れ、カウンターテーブルに置いた。


「はい、どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


頭をペコリと下げ、怖ず怖ずと椅子に腰掛けた。


いつも紅茶を用意してくれる英二さんは、私がコーヒーを飲めないことを知っている。


初めてコーヒーを淹れて貰った時、せっかくの好意を断るのが申し訳なくて無理して飲んでいると、なぜか彼に見透かされてしまって……。


「すぐに気付かなくてごめんね」と申し訳なさそうに微苦笑を零し、続けて柔らかい笑顔で「なにが好き?」と訊いてくれた。


それ以来、季節や天候によってアイスだったりホットだったり、そしてほぼ毎回フレイバーも違うけど……。


英二さんはいつも決まって、当たり前のように紅茶を淹れてくれるのだ。


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