狡猾な王子様
明日、どうしよう……。


最近、以前にも増して木漏れ日亭からの注文が頻繁に入るようになって、明日も配達することになっている。


昨日あんなことがあったのに、明日には英二さんと顔を合わせなければいけないなんて……。


いくら自業自得とは言えども、仕事を投げ出したくなる。


もちろん、そんなことはできない。


いくら実家を手伝っている身だとは言え、そんな甘えが許されないことくらいはちゃんとわかっている。


だけどやっぱり、英二さんに会えばまた浅はかな言葉を紡いでしまいそうな自分自身が恐くて、せめて明日だけでも顔を合わせたくなかった。


ただ……。


それでも英二さんの真意を知りたいと思う私もいて、内気なわりには意外と図太いのではないかと思う。


「とりあえず、できるだけ普通にしなきゃダメだよね……」


お湯に深く浸かりながら考え過ぎたせいで逆上せてしまいそうになっていた私は、ため息を漏らしてから重怠い体を引きずるようにして湯舟から出た──。

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