狡猾な王子様
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翌朝は心地好い晴天で、まるで私の気持ちを嘲笑うかのようなすっきりとした空に、昨日までよりも気分が滅入ってしまった。
「ご馳走さまでした」
「ふうちゃん、もういらないの?」
「うん……」
心配そうな弥生ちゃんに苦笑すると、千佳子ちゃんも眉を下げた。
「どうしたの?体調でも悪い?」
「ううん、そんなことないよ。あんまりお腹空いてなくて……」
慌てて笑顔を繕ったけど、朝食を摂る皆の顔は怪訝そうだ。
目ざとい秋ちゃんが夜勤でいないことにホッとしつつ、食器を持って立ち上がる。
「しっかり食べないと、午後まで持たないわよ」
「大丈夫だよ」
窘めるお母さんに笑顔を向け、少しだけ悩んだあとでお父さんの顔を見る。
「私、先に行ってるね。お父さんたちはあとでゆっくり来て」
今日は居心地が悪く感じる居間から逃げたくて、後片付けをしないことを申し訳なく思いながらも性急に畑に向かった。