狡猾な王子様
「今日の紅茶も、すごく美味しいです」


ストローから口を離して笑うと、英二さんが綺麗な瞳を緩めて柔らかく微笑んだ。


「よかった」


甘い顔立ちをした彼の表情はいつだって好意的で、心臓がトクンと小さく跳ねる。


胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚に苦しさは微塵もなくて、柔らかな温もりが広がっていくような気がした。


「お、ツヤのあるトマトだねー」


段ボールから野菜を取り出す英二さんは、まるでひとつひとつを愛でるように微笑みながらカウンター越しの台に並べていった。


その表情はまるで子どものようで、とても可愛らしい。


「来週はさ、白菜とほうれん草もお願いできるかな?」


「はい」


「あ、できればさつまいもも欲しいんだけど、手に入るかな?」


「品種がなんでもいいなら、たぶん大丈夫だと思いますよ」


「じゃあ、それもお願いしてもいいかな?」


私が笑顔を見せて頷くと、英二さんが安堵混じりの笑みを零した。

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