わたし、巫女ですから
「もらっ、た、んだ……!」
「もらった?誰に?」
答える前に、大きく深呼吸をして、一度息を整える。
「女の子……人間だけど」
「人間?!椿、大丈夫なのか?何もされてないか?」
「何もされてないよ!すごく、優しそうだったし……」
「優しそうって、相手は人間なんだろ?餌付けして、捕まえるつもりだったかもしれないぞ」
「そ、そんなこと……」
『ない』と言えない。牡丹は真剣だったし、事実、そうでない根拠はどこにもないのだ。
僕がそう思いたい、だけで……。
「まぁ、せっかく貰ったんだ。二人が帰ってきたら、分けて食べよう!」
「う、うん」
楓と藤が帰ってきて、パンを貰った経緯を話すと、人間嫌いの藤は案の定パンを食べるのを嫌がった。
けれど、今日の収穫は僕が貰ったパンだけだったから、藤も渋々、自分の分のパンを食べた。
袋から出したばかりのパンは柔らかくて、残飯からあさってくるパンとは大違いだった。