わたし、巫女ですから



 ーー翌日、僕は道端でつんだ野花の束をくわえて、表通りを覗いていた。

「通らない、かなぁ」

 どうしてもお礼が伝えたくて、こうして待って居るけれど、そもそも今日もここを通るとは限らないのだ。
 昨日は買い物帰りみたいだったし……。

「花、摘み直さなきゃ……」

 朝からずっとくわえていた野花は、夕刻にはしおれてきていた。

 他の花を探そうと振り返った途端、聞き覚えのある鼻歌が聞こえて、慌てて人型に化けた。
 耳と尻尾はまだ隠せないから、フードを目深に被って、尻尾は一つに束ねて背中に隠した。

 目の前を、昨日の女の子が通る。背中にピンクのランドセルを背負っていた。

「あ、あの!」

「へ?」

 女の子は辺りをキョロキョロと見回した後、路地裏に立っている僕に気付いて、歩み寄ってくる。

「わたしのこと、呼んだ?」

「う、うん……えと、その……」


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