わたし、巫女ですから



 声を掛けたんだから、もう腹をくくらなければーーと、分かってはいても舌が上手く回らない。

「……?わたしに何か用事?」

「用事っていうか、その……」

 ーーええい!もうヤケだ!

「き、昨日の狐!僕が飼ってる狐なんだ!パン、すごく嬉しかったから、こ、これ!お礼に……!」

 一息に言って、不格好な花束を差し出す。ちらりと女の子の様子をうかがうと、とても驚いた顔をした後、ふわりと笑った。

「ありがとう!花束なんて、もらったの初めてよ」

 初めてだと言われると、こんな不格好なもので良いのかと申し訳なくなってしまう。

「ご、ごめんね。しおれかけてて……」

「ううん!とっても素敵な花束よ!わたし、お花大好きなの」

「そ、そっか。良かった!」


< 13 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop