わたし、巫女ですから



「わたし、今日はもう帰るね!」

 そう言って駆け出して、少し先で振り返る。

「わたし、この道通学路だから、いつも通るの。また会える?」

「う、うん!明日も、ここで待ってる!」

 手を振れば、大きく振り返してくれて、今度こそ駆けていった。

「また、会えるんだ……」

 自然と笑みがこぼれてしまう。また会える。それに……自分が妖怪だと知っても、何もヒドいことなんてしなかった。けど……

 ーー反対、するだろうなぁ……。

 妖怪仲間たち、特に藤は、ひかりと仲良くするのを反対するだろう。妖怪だとバレたことを話したら、怒るかもしれない。
 心配してくれているのは分かっているけれど、どうしても、ひかりと仲良くなりたい……。

 ーー内緒に、しよう……。

 胸がちくりと痛んだけれど、こうするのが一番だと自分に言い聞かせて、帰路についた。

「た、ただいま」

 狐の姿でも、妖怪同士なら会話できる。三人も、獣の姿で出迎えてくれた。

「おかえり。遅かったな」

「心配してたんだぞ」

「ご、ごめん……」

 いざ三人の顔を見ると、罪悪感がこみ上げてくる……。言ってしまった方が、いいのかな……。

「ーーあ?椿、お前……人間の臭いしねぇか?」

 一番の人間嫌いの藤が、鼻をひくつかせて僕を鋭く睨むーーもともと目つきがキツいから、なおさら怖い。

「あ、えと……大通りの方に行ってたから、じゃないかな?」

 これなら、嘘は言ってない。……本当のことも、言ってないけど。

「大通り?昨日、人間の女の子に会った辺りか?」

 普段呑気な牡丹なのに、こういう時に限って勘がいい。

「会いに行ってたのか?」

 楓は楓で、遠慮も躊躇いもなくズバリ問うてくる。

 ーーまったく!僕の周りは嘘のつきにくいのばっかりだ!

 ここまで言われてしまっては、観念するしかない。仕方なく頷くと、案の定、藤の怒鳴り声が降ってきた。


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