わたし、巫女ですから
時刻は翌日、お昼過ぎーーそろそろ大通りに向かわないと、ひかりに会えない。
ーーんだけど……
藤と牡丹は食料探しに出ているけれど、楓が僕のことをずっと見つめている。
狐だけど、蛇に睨まれた蛙の気持ちがよく分かる。これでは動けない。
「ね、ねぇ?楓、まばたきぐらいしたら……?」
「あんたを逃がす訳にはいかない」
「に、逃げないから、まばたきしてよ。……怖いから」
そう言うと、ぱちくりとまばたきをして、またジーッと見つめられる。
ーーどうしよう。これじゃ、ひかりに会えないよ……。
「……はぁ」
ため息が止まらない。もうこれで何十回目だろうか。
「……惚れたのか?」
「ふぇっ?」
直球な質問に、思わず変な声が出る。
ーーひかりに、惚れたのかって、訊かれたんだよね……。
「……うん。ひかりが、好き」
言葉にして、自分でも確かに自覚する。僕は、ひかりに一目惚れしたんだ。
「食べ物を貰ったからか?」
「そんなんじゃないよ!」
「なら、どうしてだ?」
「それはーー目が、優しそうだったから」
初めて会ったとき、すごく優しい目を向けてくれて、笑った顔も柔らかくて素敵で、なんだか胸の奥が温かくなって、もっと話したい、仲良くなりたいと思ったんだーー。
「一目惚れ、か」
「うん。……ひかりは、いい子だよ。お願い!ひかりに会わせて!」
好きだと自覚してしまえば、会いたい気持ちはますます強くなる。こっそり行くのがダメなら、直接ぶつかるしかない。