わたし、巫女ですから


「……仕方ないな」

「あ、会いに行って、いいの?」

「だが、私も付き添う。それに、そのひかりと言う子供が敵意を見せたら、容赦なく喉元を喰いちぎるぞ」

「く、喰いちぎるなんて……!」

「敵意を見せたら、と言った。優しいいい子だという自信があるから、会いに行くのだろう?なら、構わないはずだ」

「……分かった。行こう」

 ひかりは何もヒドいことなんてしないはずだ。そう信じて、楓と二人で大通りに向かった。

 大通りのそばまで来て、人の姿に化ける。まだ長い時間化けていられないからだ。
 僕はまだ耳と尻尾が隠せないから、フードを被って尻尾は一つにまとめて背中に隠している。
 楓は、首もとに鱗が少し残るのと、舌が二俣に分かれた蛇の舌のままだったけど、ストールを首に巻いて口を閉じておけば、普通の子供と変わらない。

 二人とも変化して路地裏から大通りに顔を覗かせると、ひかりが小石を蹴って遊んでいるのが見えた。

「ひかり!」

「あ、椿!」

 僕の姿を見つけると、にこにこと路地裏に駆け込んできた。

< 20 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop