君との時間〜冬の空の下、君と出会えた。〜
冬の芽
11月21日。
あの日の朝はとても寒かった。
赤と黒のボーダーのマフラーを何重も首に巻き、手は制服のポケットに入
れた。
呼吸をするたびに白い息が口から出るのはもう見飽きたほどだ。
マンションを出て、徒歩10分。
いつものバス停に着いた。
俺、山田 風李(ヤマダ フウリ)は一ヶ月ぶりに都内にある北城高等学園の芸能科に通っている高校2年生だ。
ジャニーズ事務所の「PEACE」と言うグループに所属している。
芸能界での仕事が忙しいからか、めったに学校には行けない。
通学時は顔がバレないようにするのは、困難だ。
7時30分。
時間ぴったりに来たバスに急いで乗り込む。
中は暖房が効いていて暖かい。
席が開いていないのを確認すると渋々とため息をつきながら、つり革に左手をかける。
右手で携帯を開くとメールが一件届いていた。
メールBOXを確認すると、その一件とはアプリ会社から届いたものだった
。
メールを開くと、ずらりとアプリの宣伝文が並ぶ。
読む気が失せた。
『めんどくせ…。』
と思いながら携帯を閉じようとするとアプリの宣伝文の一部に書かれた、
『運命の人』
という文字に目を止めた。
閉じかけた携帯を開き『運命の人』と書かれた文章を読んだ‥。
* * * * * * * * * * *
ー運命の人
それは偶然ではない。
必然である。
あなたは好きな人や、恋人はいますか?
でも、その人は運命の人とは限らない。
そんな時にこのアプリを…
* * * * * * * * * * *
読み終わり携帯を閉じた。
「運命の人‥。」
ハッキリ言うが実は‥
今まで好きな人も恋人もまったく出来た事がない。
仕事が忙しいというのもあるだろう。
そういう経験はまったくなかった。
このままで大丈夫か?
と思わずにはいられない。
『ま、いっか。』
恋愛なんて必要性感じねーし。
携帯をポケットに入れ、iPodを取り出しイヤホンを付音楽を鳴らす。
ー○○に到着いたしました。
バスの運転手の声がバスの中に響く。
ーガタッ
バスの扉が開いた。
その瞬間…
突然、雪が降り始めた。
何かの始まりを告げるかのように…。