溺愛協奏曲
「戸田 茜です、軽井沢から来ました宜しくお願いします!」




夏休み前という中途半端な時期とお人形さんのような美少女の登場に




クラスは興奮状態というか大騒ぎ



「莉子ちゃん、ヤクザの娘ってこと知られたくないから


お母さんの旧姓使うことにしたの、絶対言わないで!普通の女の子


としてこの学校では過ごしたいの」




という茜ちゃんの要望で大関ではなく戸田姓を使うことに・・・・




普通の女の子として過ごしたい茜ちゃんの切なる願いに黙って頷いた




たまたま親の稼業がヤクザだった



それだけのこと




「絶対言わないから!親御さんがどんな職業でも茜ちゃんは茜ちゃんでしょ」



「え~ん!!莉子ちゃ~ん」





お昼休みお弁当を広げプール脇の桜の木の下で茜ちゃんは泣き崩れた



あたしが知らないだけで茜ちゃんも、そして蓮も辛い思いをしてきたんだな




って思うと胸が苦しく心に棘が刺さったような感じがした



もともと人懐っこい性格の茜ちゃんは瞬く間にクラスにとけこんでいた



帰る頃にはもう、放課後の約束を取り付けてたし・・・・



「莉子ちゃんも行く?」



「あたしはいいや、茜ちゃん楽しんでおいで」




「わかった、じゃあまた今度ね」



手を振る茜ちゃんに向けてあたしも手を振る



校舎を出ると校門には蓮の姿が見えた



駆け寄ろうとすると後ろから声が聞こえる



「あいつ、高遠莉子の母親って男つくって出てった最低な母親らしいよ


母親に似て、男たらしこむのうまいんじゃないの?蓮様も趣味わる~い」




「なんか転校生とも仲良さげだし生意気~」




聞きたくなくても聞こえる声に黙って俯きながら蓮のもとへ走った



あたしには母親なんていないんだ



泣きそうになるのを堪えながら笑顔を張り付けた






















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