溺愛協奏曲

「え・・・笑いかけんなって」




「莉子は俺だけに笑ってればいい、そんな顔他の男に見せんな」




「でも、拓巳くんは友達だし・・・蓮の友達でもある訳だし、そんなの・・・」




「あ？なんだと・・・「蓮、もういいじゃん男の嫉妬は見苦しいよ」」



「見苦しいだと！拓巳もういっぺん言ってみろ」



蓮はコーヒーを飲み干すと拓巳くんの胸倉を掴んだ



あっという間に喧嘩が始まったけどあたしはおろおろするばかり




でもなんか・・・・こんなこと言ってはなんだけどまるで兄弟喧嘩のよう





涼くんはこんなこと日常茶飯事なのかスマホから目を離さないままあたしにチラリと視線を向けた




「時機に治まるから心配いらないよ、莉子ちゃん」




「そ・・・そうなんだ・・」




呆気にとられるあたしをよそに二人はまだ殴りあったりして喧嘩をしている



喧嘩するほど仲がいいってこの二人のことかもしれない




苦笑いしていると涼くんはあたしを見つめたまま深い溜息をつくと



スマホに視線を向けたまま意外な人物の名を口にした




「茜ちゃんから連絡が来たんだけど、莉子ちゃんと逢いたいそうですが

どうしますか」



涼くんの一言に反応したかと思うと二人の喧嘩がぴたりと止み静寂が襲う



あたしの脳裏に男達の顔と刺された瞬間の映像が蘇った