溺愛協奏曲
龍斗さんは溜息をつくとソファに座ってどこか遠くを見ていた



そんな龍斗さんにかける言葉なんて見つからなくてただ見つめるしかなかった




「俺、見たんだよ・・・・祭りのとき、莉子ちゃんと一緒にいる玲奈を・・・」




「龍・・・・・」





「幻かと思ったけど・・・それから頭ん中玲奈のことでいっぱいで

頭から離れなくなった・・あの時見たのはなんだったんだ?


玲奈によく似たやつなのか、それとも・・・・ってな」




苦笑いする龍斗さんをあたしはただ黙って見つめた



玲奈ちゃんの背中をさすりながら大粒の涙を流す・・・玲奈ちゃんは今何を思うんだろう



「龍・・・・ごめんなさい、あたし歩けるようになったら龍に逢いに行こう


って決めてたの、だから隠れてるつもりなんてなくって・・・」




「もういい・・・・わかった、わかったからもう泣くな


お前の気持ちは痛いほどわかったから・・・」



そう言って見つめる龍斗さんの瞳はどこまでも優しくて・・・



これからの二人が明るい未来に向かっていけるようにと願わずにはいられなかった



それからなにごともなかったように明るく話す玲奈ちゃんにあたしは心の底からほっとしていた



怪しく光る携帯のメールなんかに気付きもしないで笑う自分が居たけれど



そのメールが嵐を巻き起こすとはこの時のあたしはまだ何も知らなかった


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