溺愛協奏曲
「あの男って・・・・慎ちゃんのこと?」




「慎ちゃん?・・・・」




あたしが慎ちゃんって名前を呼ぶと抱きしめる腕が強くなったような気がした



蓮は耳元で囁くように話しかける




後ろにいるから表情まではわからないけれど蓮の心が揺れているように感じた




「慎ちゃんはあたしのひとつ上の幼馴染、子供のころ近所に住んでてよく遊んだんだけど


身体が弱くって・・・・六歳の頃治療の為に海外へ行くことになって引っ越して行ったんだけ



ど・・・それ以来だから、逢うのは十年ぶりなんだよね」




「婚約者って・・・・」




「ああ・・・そのこと?あの頃は慎ちゃんが治療が辛かったり


入退院を繰り返したりすると決まって、莉子ちゃんがお嫁さんに



なってくれる?って聞いてきてね・・・・なってくれるんなら




僕治療頑張れるよって言うからいいよって言っただけで・・・・



たぶん、そのことを言ってると思うんだけどあたしも慎ちゃんに言われて



咄嗟に思い出せなかったんだけど、子供の頃のことだし・・・まさか



その時のこと、言われるとは思ってもみなかった」




あたしは苦笑いしながら蓮の手をそっと握りしめた



蓮は後ろからあたしを抱きしめたまま・・・



「あたしが今好きなのは蓮だけだよ・・・」




「知ってる・・・」



こめかみにそっと唇を寄せたまま呟く



「莉子は誰にも渡さねえ・・・・」



その呟きはあまりにも低い声だったのか周りの雑音に消されたのかあたしには



聞こえることなく不安を打ち消すかのように蓮は抱きしめたまま離そうとはしなかった
























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