溺愛協奏曲
蓮は女の子を抱いたまま教室を出ていく



入り口にいたあたしを見つけると驚いたような顔をする・・・




一瞬で柔らかい笑顔を浮かべたかと思うとあたしの傍に来て耳元で囁いた



「莉子、ちょっと行って来るから待ってろ・・・いいな?」



「う・・・うん待ってる・・・」




そう頷くと蓮の後ろ姿をじっと見つめた




廊下を姫抱っこして歩くその姿は文句なしにかっこよくて・・・・



まるで王様のような彼に廊下の通行人も自然と避けている




あたしはただただ何もできなくて見ているだけ



蓮の姫抱っこする姿を目で追った



さっきから胸が苦しくって仕方ない




いや・・・・いやだ




いやだよ・・・・




蓮が他の女の子抱っこしてる姿なんて見たくないよ




あたし以外の女の子に優しくなんてしないで、笑顔をみせないで!




この場に居るのが辛すぎてあたしはただ逃げ出すしかなかった




「ごめん・・・あたしちょっと疲れたから帰るね・・慎ちゃんごめん・・また連絡して」




「莉子ちゃん?」    「莉子?」





悪いのは蓮じゃないのに・・・あたしってなんて心の狭い人間なんだろ



自己嫌悪に陥りながら教室を足早に後にする




嫉妬心だらけの嫌な自分を振り切るように全力で走って家路を急いだ





















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