溺愛協奏曲
携帯を開いて時間を確認するともうすでに5時を回っていた



結局服はなにも買わずに本だけを買ってきたあたし




さんざん歩き回って買ったのは本だけって・・・なんなんだろ




着飾っても見てほしいひとがいなくなったからなのかな




漠然とそんなことを思いながら家路を急いだ



するともうすぐ家に着く・・・・というところで大きな声がして後ろから呼び止められた




「・・・・子・・・典子!!」




・・・・ん?典子?




あたしを呼んでるんじゃないよね、他の誰かだよね?



きょろきょろ周りを見渡すと後ろには小柄な白髪のおばあさん一人



あたしににっこり微笑むと突然手をぎゅっと握ってきた



・・・・え?なに?なに?



一瞬パニックがあたしを襲う



「典子!もう遅いから家に帰ろう、ほら早く」



「えっ・・・ちょっ・・・ま」



おばあさんは家に入ろうとしていたあたしの腕を掴んだままどこかへ歩き出した



あたしは引きずられるようにしておばあさんのあとを着いていく



えーーーーーっおばあさん!!どこ行くの?



ってか・・・「あたし、典子さんじゃありません!」




大声でそう言うとおばあさんはぴたりと動きを止めてあたしの方を振り返った

















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