溺愛協奏曲
「えっ・・・・話し相手?」



あたしはおじいさんの提案に思わず顔をまじまじと見つめてしまった



熱い緑茶をあたしはごくりと飲むとおじいさんの言葉を待った




白髪交じりの短髪の黒髪をぽりぽりと掻きながら申し訳なさそうに見つめてくる



涼しげな目元には深い皺が刻まれていて若い頃はたぶんイケメンだったんだろうな



ってことが窺える・・・・でも話し相手って、あたしなんかでいいの?




「今日逢ったばかりのお嬢さんにこんなことを頼むのは常識はずれだって


ことはわかってるんだ・・・でも家内が、花子がこんなに典子、典子って



言って君を離さないのを見ているとなんだか気の毒になってな・・・・」




「あ・・・あの、典子さんってのは」




「十七歳で亡くなった花子の妹だ・・・白血病で亡くなってる

その妹を花子はずっと待っていたんだ、花子の中では妹は死んではいなくて


まだ生きているらしい」




十七歳で死んだ妹



おばあさん・・・花子さんはずっと亡くなった妹さんを待っていたなんて・・・




来るはずのないひとをずっと待っているなんて・・・・



なんだか悲しすぎる・・・悲しすぎるよ



「連絡をくれればわしが迎えに行くから2~3時間、いや1時間でもいいんだ


花子の話し相手になってはもらえないだろうか・・・・」




おじいさんに懇願され、おばあさんにはなんだか気にいられてしまったあたしは



断るに断りきれず結局承諾してしまった





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