溺愛協奏曲
ヘルメットをかぶって顔なんか見えないはずなのに確信めいたものがあたしにはあった




目の前に居るのは・・蓮だ・・どれくらいそこに居たんだろう




あたしの足は縫い付けられたかのようにそこから動けなくて・・・・



ドキドキが止まらなくて胸の高鳴りを押さえることが出来なかった




でも・・・蓮の傍にいるのはもうあたしじゃない、あの人なんだ



哀しいけどそれが現実で・・・あたしはもう過去の人間なんだ



あたしは連への思いを振り切るように渾身の力を振り絞り足を動かして家に入った




カギをかけると溜息をついて思わずその場に座り込んだ




後から後から涙が溢れて止まらない




こんなにも心が乱れてしまうのはたぶんまだあたしが蓮のことを好きだから・・・・




好きで好きでたまらなくて名前を呼ぶだけで心が震えるから




「なんで・・・なんで家の前にいるの・・・なんで?」



あたしの呟きが一人の夜の星空に木霊する



折れた心に蓋をして晩御飯のチャーハンをさっと作るとシャワーを浴びてベットに潜り込んだ




なんだか胸が一杯でさっきの出来事が夢のような気がして御飯も食べずに眠りにつく




でもなかなか眠れなくて眠りについたのは朝方で今日も眠れぬ夜が更けていった








< 346 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop