溺愛協奏曲
東條組で少しの間暮らしたからヤクザっぽい人には慣れてるつもりだったけど




茜ちゃんの言葉に身が引き締まるような思いがして背筋に冷や汗が流れた



なんだか、虎の檻に入る兎のような・・・・そんな気がしてならなかった



「莉子、玲奈・・忘れるといけないから渡しておくわ・・・これ招待状よ

これがないと中に入れてもらえないから気を付けて、手に入れるの苦労したんだから」



そう言って渡された招待状には、坊城家、東條家婚約披露パーティと書いてあり


下の欄に両家業務提携報告パーティとあった




坊城家長女 坊城紗枝子



東條家長男   東條 蓮




二人の名前が並んで書いてあるのを見て心が痛くなった



あたしは思わず蓮の名前をそっと指でなぞっていた




並んで書いてある文字を見ただけで胸が苦しくて涙が出そうになる




あたしは涙を堪え車窓をただ黙って見つめた



車はいつの間にかホテルの正面玄関に着いて運転手さんの声が響く



「お嬢、到着しました」




「ありがとう、お兄ちゃんも涼くんたちも来てると思うから早く行こう」




茜ちゃんに促され車を降りる



その様子を見ていた玲奈ちゃんが心配そうな顔であたしに声をかけた



「莉子ちゃん・・・大丈夫?」




「大丈夫、行こう玲奈ちゃん!」




あたしは何かを吹っ切るかのように急ぎ足でホテルの中に入った




そこが敵地であるかのような思いでゆっくりと足を進めた



















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