溺愛協奏曲
「立ったまま話すのもなんだし、座ってくれる?」




「はい・・・失礼します」




紗枝子さんに促されすぐそばにあったソファに座った


真っ白なそのソファは驚くほどふかふかで座り心地がよくて快適だった



このソファ欲しいかも・・・・なんて場違いなことをこの時のあたしは考えていた




「前置きなしで単刀直入に言うわ・・・・高遠莉子さん、あなたが邪魔で


目障りでしようがないの・・だからこの街から出てってほしいの!蓮の目の届かない



何処か遠くに行ってほしいの!もちろん住む所も引っ越し費用だって出してあげるわ


学校だって坊城の名前を出せば「ちょ・・・ちょっと待ってください、いったい何を


いってるんですか?あたしと蓮はもう・・・」



「あなたのこと・・・・忘れられないみたいなの、あたしにはわかるの・・・


知ってた?蓮はずっと学校休んでてホテルで接客とかの研修受けてるんだけど


毎日忙しくてね眠る暇もないくらいなの・・・・そんな蓮が眠れるのは移動の



車の中、夜はなかなか寝付けないみたいで唯一眠れるのが車の中らしくて


運転手が言うのよ・・・いつも寝言で誰かの名前を言ってるって・・・・」



そう一気に話し出すと紗枝子さんはあたしのほうを向いて寂しそうな顔を向けた



寝言で・・・・言ってる誰かの名前?



それって・・・・もしかして



「ふっ・・・・莉子、莉子ってうわごとみたいに言ってるらしいわ

婚約者のあたしの名前じゃなくってあなたの名前を・・・・」




あたしの頭の中に蓮の寝顔が浮かんでは消える



胸がぎゅっと苦しくなったような気がしてそっと拳を握りしめた






< 369 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop