コール マイ ネーム
注文を受けたバーテンは無言で小さく頷いて、カクテル作りへと移るが――どうにもバーテンの態度がよろしくない。確かにこの状況でにこにこと接客されても困るが、初めて来た客に対し、もう少し愛想よくところでバチは当たらないのではないか。
やりきれない思いが、バーテンへの八つ当たりに姿を変え始めたことに気付き、未奈は慌て思考を変換した。
勝手に未奈の心の登場人物にされていたなど、知るよしもないバーテンは、二つのリキュール瓶を持ち、首を傾げている。どちらを使って良いのかわからないらしい。
どうやら、ベテランではないようだ。新人か、それとも小遣い稼ぎのバイトなのか。なるほど、ならば先程の無愛想な態度も頷けなくはない。
しかし、なんというのだろう。そのバーテンはそういう類いではない気がした。
歳の頃なら、二十二、三といった所か。未奈とそう変わらないだろうその歳は『若造』と呼ばれても仕方ない筈なのに、そういわせぬオーラがある。
無造作にひとつでくくっている長い黒髪も、決して野卑なものではなく、確固たるポリシー故のスタイルに見えるのだ。センターで分けた、これまた長い前髪から覗くのは、鋭いながらもぱっちりした瞳。よくよく見れば、かなりの男前である。
やりきれない思いが、バーテンへの八つ当たりに姿を変え始めたことに気付き、未奈は慌て思考を変換した。
勝手に未奈の心の登場人物にされていたなど、知るよしもないバーテンは、二つのリキュール瓶を持ち、首を傾げている。どちらを使って良いのかわからないらしい。
どうやら、ベテランではないようだ。新人か、それとも小遣い稼ぎのバイトなのか。なるほど、ならば先程の無愛想な態度も頷けなくはない。
しかし、なんというのだろう。そのバーテンはそういう類いではない気がした。
歳の頃なら、二十二、三といった所か。未奈とそう変わらないだろうその歳は『若造』と呼ばれても仕方ない筈なのに、そういわせぬオーラがある。
無造作にひとつでくくっている長い黒髪も、決して野卑なものではなく、確固たるポリシー故のスタイルに見えるのだ。センターで分けた、これまた長い前髪から覗くのは、鋭いながらもぱっちりした瞳。よくよく見れば、かなりの男前である。