秘蜜の秘め事
大教室なので、当然この講義を受けている生徒数は多い。

授業も終わってガヤガヤしているので、まるで呟いているその声は聞こえない。

はずだけど、その声はよく通っていてわたしの耳に入った。

声のした方向に視線を向ける。

オレンジ色かと思うくらいの明るい茶色の、猫っ毛の髪。

…あれれ?

何かこの髪、すごく見覚えがある。

当人の顔を確認すると、一瞬女の子かと思ってしまった。

喉仏と高身長で男の子だと理解したけど。

「――あの…」

言いかけたわたしをさえぎるように、
「もしかして、りっちゃん?」

彼が言った。
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