秘蜜の秘め事
もちろん、ジョーダンではなく本気だ。

さっき梨衣と一緒にお風呂に入った時、見知らぬ爪痕を見つけた。

僕の“痕跡”と重なるようについている爪痕に、最初は背中をかいた時にひっかいたものなのだろうと思った。

梨衣の手を見た時、それは違った。

彼女は家事をするため、普段から爪を短く切っていた。

そうなるとこの爪痕は、誰かがつけたものとなる。

…一体誰が?

梨衣が、僕以外の人間に背中を見せる訳がない。

ましてや、痕をつける人間が僕以外にいる訳がない。

だけどその爪痕は、まるで僕に存在を見せつけてやると言わんばかりに“痕跡”のうえについていた。
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