秘蜜の秘め事
怖かった。

知っている人だったとは言え、知らない人みたいだった。

「――ウッ…」

「梨衣…」

嗚咽をもらしたわたしの肩に、真の手が触れた。

「怖かったんだね」

そう言った真に、わたしはうなずいて答えた。

「もう、大丈夫だから」

わたしの背中に真の両手が回って、抱きしめられた。

真の体温に包まれて、ホッとする。

「――真…」

名前を呼んだわたしに、
「梨衣」

真は答えてくれた。
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