秘蜜の秘め事
「ごめん、何でもない」

真は首を横に振った。

「映画が終わったら、電話して迎えを頼むから」

「…そう言うことを言った訳じゃないんだ」

真は言いにくそうだった。

わたしはよくわからなくて、首を傾げる。

「僕は…一体何が言いたいんだろう」

真は小さく呟いた。

「…真?」

彼の名前を呼んだわたしに、
「ごめん、今スランプに入ってるんだ」

真は笑いながら答えた後、イカリングを口の中へ放り込んだ。

「映画、楽しんでおいで」

真はつけくわえるように言った。
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