秘蜜の秘め事
梨衣は意識を失っているのか、目を閉じていた。

「梨衣!

梨衣!」

僕は彼女の名前を呼びながら、躰を縛っている鎖を外そうとする。

だけど鎖は外れるどころか、躰に食い込んできた。

僕が暴れれば暴れるほど、鎖も押さえつけるように強く食い込んでくる。

「――ッ…!?」

目を閉じている梨衣の前に誰かが現れた。

オレンジ色に近い茶色の髪の男――いや、男の子と言った方が正解だろう。

年齢は、梨衣と同じくらいか1つか2つ上か。

男の子は僕を見ると、バカにするようにニヤリと笑った。

それから意識を失っている梨衣の躰に、その手を触れた。

「やめろー!」

男の子に向かって僕は叫んだ。

彼は僕の声なんか聞こえていないと言うように、僕の目の前で梨衣をさわった。
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