秘蜜の秘め事
なのに僕は…何をした?

感情任せに怒鳴って、彼女を怖がらせてしまった。

「――最低だ…」

情けなくて、呟いた。

僕は、最低だ。

窓越しにいる彼女の顔を見ることができない。

怖くて見ることができない。

春の冷たい夜の風は僕の頭や躰だけじゃなく、心までも冷やした。


その翌日のこと。

「――くしゅん!」

大きなくしゃみを1回した後、僕はティッシュで鼻をかんだ。

「…大丈夫?」

そう声をかけた梨衣は怯えていた。
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