秘蜜の秘め事
日づけが変わるまでベランダにいたせいで、僕は見事に風邪をひいてしまった。

「大丈夫じゃないと思う」

そう答えた僕に、
「そう…」

梨衣は呟くような小さな声で返した。

ベッドのうえで横になっている僕と椅子に座って僕の顔を覗き込んでいる梨衣。

こんなにも近い距離のはずなのに、遠く感じるのは僕の気のせいだろうか?

「学校に行かなくていいのかい?」

そう聞いた僕に梨衣は言いにくそうに目を伏せて、
「――真が風邪ひいてるのに、行ける訳ないじゃない…」
と、呟くように言った。

「…そう、だったね」

僕はそう返すことしかできなかった。

それから沈黙。

先に沈黙を破ったのは、
「何か食べる?」

梨衣の方からだった。
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