秘蜜の秘め事
僕は首を傾げた。

「何か食べたかったら、今すぐコンビニに行って…」

「行かないで」

言いかけた梨衣をさえぎるように、梨衣に向かって手を伸ばした。

「ま、真?」

梨衣が戸惑っている。

伸ばした手は届かなかった。

それが、僕らの今の距離を表しているみたいだ。

手が届きそうなくらい近くにいるのに、遠くにいるせいで届かない。

梨衣は恐る恐ると言うように、伸ばした僕の手に触れた。

小さな彼女の手から、彼女のぬくもりが伝わる。

そのぬくもりを閉じ込めるように、僕は彼女の手を握った。
< 265 / 440 >

この作品をシェア

pagetop