秘蜜の秘め事
やめたのには、理由があった。

言いたいことや思ったことを言ったって、いいと思う。

むしろ、言った方がお互いのためにいいと思う。

きぃちゃんがわたしの間に引いている見えない境界線を消すことができるかも知れないから。

でも…言ったらお互いの関係が壊れてしまうんじゃないかと思っている自分がいた。

きぃちゃんとわたしの関係――ただの幼なじみのはずなのに、それが壊れてしまうんじゃないかとわたしは恐怖に感じている。

この前見た夢の出来事が、まだわたしの心の中に強く残っているらしい。

「りっちゃん?」

何も言わないわたしにきぃちゃんが心配したのか、顔を覗き込んできた。

「早く入ろう?」

わたしは映画館を指差した。
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