秘蜜の秘め事
次に出てくる言葉が怖かった。

「恋人の存在。

それが、俺が知らない間に変わっていたりっちゃんだった」

静かに、だけど心の中をグサリと刃物で刺すように、きぃちゃんが言った。

「…ッ」

言葉が出てこなかった。

いつものきぃちゃんじゃない…。

わたしは1歩後ろに下がった。

「俺が怖いの?」

きぃちゃんが言った。

「こ…怖くなんか…」

「じゃあ、何で逃げてるの?

怖くなかったら、そうやって俺から逃げないよね?」

目を伏せた。

「りっちゃんが欲しくて欲しくて、ずっと手に入れたかった。

やっと手に入ると思ったら、古沢真が邪魔をした」

「真のことを悪く言わないで…」

「俺からして見たら、古沢真は悪者だよ!

俺からりっちゃんを奪った、最悪な人だ!」

小さな反抗の声は、きぃちゃんの耳に入らない。
< 291 / 440 >

この作品をシェア

pagetop