秘蜜の秘め事
周りを見ても、誰もいない。

目の前には、わたしの知らない怖い顔のきぃちゃんがいる。

「――いやっ…」

出てきた声は、震えていた。

「やっと、手に入れた」

きぃちゃんが呟くように言ったのと同時に、わたしときぃちゃんの距離がゼロになった。

「い…やっ…」

抵抗する声は、震えている。

「梨衣…」

きぃちゃんの顔が近づいてくる。

「――ヤ…ヤだぁ…!」

バッコーン!

持っていたカバンで、きぃちゃんの頭をたたいた。

「ヤだ!

やめて!

こないで!」

何回たたいているのか、自分でもよくわからなかった。
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