秘蜜の秘め事
上に視線を向けると、真の青いカサだった。

「どうしたんだ?

折りたたみのカサを持って行ったはずだろう?」

心配そうに聞いてきた真に、
「――ふっ…」

ガクンと、足が崩れ落ちた。

「梨衣!?」

真がわたしの名前を叫んだのと同時に、背中に大粒の雨が当たった。

真が自分のカサを落としたのがわかった。

地面に倒れそうになる躰を、真の腕が支えた。

「梨衣、どうしたんだ!?」

真の腕に支えられながら、わたしは真を見あげた。

「――わたし…」

「うん?」

唇が、震える。

「――うっ…くっ…」

真の胸に顔を埋めて、泣き出した。
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