秘蜜の秘め事
真に支えられるように家についても、わたしの涙は止まらなかった。

「梨衣、大丈夫?」

真がバスタオルを差し出した。

わたしはそれを受け取ると、雨と涙で濡れた自分の顔に埋めた。

真がわたしの頭にバスタオルを乗せると、髪を拭いてくれた。

「今お風呂わかすから…」

そう言って離れようとした真に、
「――待って…」

タオルから顔をあげて、真の服のすそをつかんだ。

真も頭の先から足の先まで雨で濡れていた。

「――行か、ないで…」

「行かないでって言われても…」

真は困ったと言うように、濡れた髪をかきあげた。
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