秘蜜の秘め事
なかなか服のすそを離そうとしないわたしに、
「――その…すぐ戻るから、それまで待っていてくれるかな?」
と、真が言った。

そう言った真に、わたしは服のすそを離した。

真は心配した視線をわたしに向けた後、パタパタと足音を立てながらバスルームの方へ向かった。

わたしは真が帰ってくるのを待った。

――きぃちゃんは、まだあの場所にいるのだろうか?

雨の音から、激しく降っていることがわかった。

きぃちゃんはあの場所にまだいて、泣いているのだろうか?

彼を放って置いて逃げたわたしは最低だ。

殴った行為自体も最低なのに。

最低に最低を重ねているわたしは…一体、何がしたかったのだろう?

「梨衣」

真が戻ってきた。
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