秘蜜の秘め事
「きゃっ…!」

パシャンと、わたしは温かいお湯の中に包まれていた。

「ふぅっ…」

真は息を吐くと、わたしの向かい側に座った。

バスルームは、湯気で充満していた。

「かっこ悪いな」

湯気の中で、真は自嘲気味に呟いた。

「えっ…?」

わたしは聞き返した。

かっこ悪いって、何が?

「梨衣に対して、こんなにも余裕がない…」

真は呟くように言った。

「カサも差さないで雨の中を歩いている梨衣を見て、気が狂いそうだった。

何かあったんじゃないかって、そう思った」

そう言った真は、まるで懺悔しているみたいだった。
< 301 / 440 >

この作品をシェア

pagetop