秘蜜の秘め事
真はフッと笑って、
「梨衣らしい」
と、言った。

「僕も、どんな形でも梨衣を好きになっていただろうな。

いや、好きになれるんだろうな」

そう言って真はわたしに近づいて、
「――ッ…」

唇を重ねた。

チュッ…

その音が密室のバスルームに響いた。

わたしは一瞬だけ聞こえたその音から逃げるように、目を伏せた。

真とキスするのは、もうなれたはずだった。

額や頬、唇、それ以上の場所はもちろんのこと。

だけど…まだキスすることが恥ずかしい、なんてな。
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