秘蜜の秘め事
そんなわたしに、
「欲するのは、まだ早かったかな」

真はクスッと笑った。

「でも…梨衣が泣き止んでくれてよかった」

「――あっ…」

そう言った真に、わたしはきぃちゃんの忘れかけていたきぃちゃんの存在を思い出した。

きぃちゃん、まだあの場所にいるのかな?

「どうしたの?」

真がわたしの頭の中を読んだと言うように聞いてきた。

「――真…」

名前を呼んで、口を閉じた。

いや、口を閉じる理由なんかない。

そもそも、真にはきぃちゃんのこと自体話していないじゃない。
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