秘蜜の秘め事
「母親は必死になって働いていた。

昼は小さな弁当屋さんで働いて、夜はスナックで働いた。

俺が5歳の頃だったかな?

母親に、男ができたのは」

きぃちゃんはそこで話を区切った。

「母親が働いていたスナックの常連さんで、家にもよく遊びにきてたんだ。

最初の頃は俺もその人に遊んでもらってたけど…邪魔者だって、虐待されるようになったんだ。

お前が邪魔だ、お前なんか消えてしまえばいいって罵倒されて、殴られて蹴られて、背中に熱湯をかけられて…」

きぃちゃんは思い出したと言うように、自分で自分を抱きしめた。

その背中には、虐待された傷跡がまだ残っているのだろう。

「母親がそれを知っていたかどうかなんてわからない。

知っていたとしても男と別れたくないからって言う理由で、知らないフリをしていたんだろうな」

そっと、きぃちゃんに視線を向けて見ると…きぃちゃんは、震えていた。
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