秘蜜の秘め事
「今でも、虐待される夢を見るんだ。

優しいおじさんが般若のような怖い顔で、俺を殴っている夢。

母親はそこにいるけど、見て見ぬフリをしているんだ」

「――ひどい…」

わたしは、そう呟くことしかできなかった。

「でも俺がそれでも耐えることができたのは、りっちゃんのおかげだったんだ。

友達がいなくて1人ぼっちの俺を、りっちゃんはいつも笑顔で話しかけてくれたから。

笑顔で話しかけてくれて、遊んでくれたから。

りっちゃんのおかげで、俺は耐えることができたんだ」

きぃちゃんは話を続けた。

「小学校にあがった頃だった。

母親が男と一緒に俺を捨てて、どこかへ逃げた。

俺は1ヶ月、母親が帰ってくるのを待った。

母親は、笑顔でまた俺の元へ帰ってくるかも知れない。

抱きしめてまた一緒に暮らしてくれるかも知れない、そう信じて疑わなかった。

もう2度と、母親は戻ってこなかった」
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