秘蜜の秘め事

第1章

恋愛小説家と言う職業になって、今年で13年。

欧米では“13”と言う数字は不吉なのだそうだ。

…なんて、今はそんなウンチクを披露している場合ではない。

僕――古沢真、38歳は…作家人生初めてのスランプに陥っていた。

真っ白な原稿用紙を見つめても、何もアイデアが出てこない。

書きたい内容が浮かばない。

書きたいことがある…はずなのに、書けない。

文字として表現することができない。

「先生、大丈夫ですか?」

机に向かう僕に、後ろから相川が声をかけた。

「…大丈夫じゃないんだ、それが」

僕は答えて、椅子を動かして相川に向けた。
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