秘蜜の秘め事
すっかり父親らしくなった彼の顔が目の前にあった。

「まあ、仕方ないですよね。

前作の『ロンリーチャップリン』は2年半も続いた作品でしたからねぇ。

先生も燃え尽きてしまうのも仕方がないでしょう」

相川はふうと息を吐いて、長くなった前髪をかきあげた。

彼がたった今言った前作は大人恋愛で、しかもシリアス色だったから体力はかなり消耗した。

主人公の男女2人が僕の思うように動いてくれなかったからなあ。

そのうえ物語の中で7年も時間が進んでしまったから…。

「ああ、そうだ」

相川が思い出したと言うように言った。

「何だ、どうした?」

僕は聞いた。

相川は急に改まって、
「お世話になりました」

ペコリと頭を下げた。
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